入試解禁日とは「入試が開始される日」のことです。少子化、公立中高一貫校の設立などによって受験生の奪い合いが激しく行われている昨今、受験生、それも優秀な受験生を私立中学校が公平に確保するためには、地域の入試開始日を揃え、一斉に入試をスタートする必要があります。
 
特に首都圏、関西圏のように他府県にまたがって通学できる圏内の場合、就職がそうであるように入試解禁日が設定されなければ、できるだけ早く入試を行って優秀な受験生をかき集める「青田買い」が横行する可能性があるからです。限りなく入試を前倒しするフライイングをなくすために設定するのが入試解禁日といえそうです。
 
各都道府県の私学協会では話し合いによって、地域の「入試開始日=入試解禁日」を設定し、お互い同じ土俵で公平に競争をするよう努めています。地域の半分以上の中学校が基本的に入試解禁日に入試日を設定しますが、特定の人気難関中学以外の多くの私立中学では複数の受験機会や午前入試・午後入試などに機会を設け、一人でも多くの受験生に受験してもらうべく様々な仕組みを提供しています。私学にとって、なにより生徒の確保は大事ですが、それとともに受験生が支払ってくれる「受験料」は私学にとって貴重な収入源なのです。
 
ちなみに、これは私立大学の話ですが、近畿の関関同立(関西学院、関西、同志社、立命館)と呼ばれる有名私立大学側が読売新聞に明らかにしたことによれば、2007年度の入試のうち【センター試験だけを利用した入試方式】による合格者の関関同立への入学率はなんとたったの10%にもかかわらず、受験料収入は約12億8000万円に上ったと明かしたそうです。合格しても入学する生徒が少ないとしても、学校を受験してもらうこと、つまり受験料を支払ってもらうことが以下に私学の経営にとって大事かがわかる事例でしょう。
 
第一志望に選んでもらう、受験してもらうためには、大学への合格実績、制服、校風、伝統、カリキュラムなどなど私学は魅力ある学校作りを営々と行っていかなければ、少子化の時代ではすぐに定員割れになって経営難に陥ってしまうのです。
 
また、午前入試・午後入試を含む複数の受験機会を各中学校が設けることによって、中学受験においては、ダブル(複数)出願というのも一般的になっています。ダブル出願とは、入試日程が同じ中学校に同時に願書を出しておくことで、それまでの合否状況、出題傾向、応募倍率、体調などを見極めたうえで、前日にどちらかの中学校を受験することを決定するものです。
 
受験料は無駄になりますが、合否状況によっては子供が大きく動揺する、たとえば絶対確実といわれていた中学校に不合格となった場合、不合格になった学校よりも偏差値が高い学校への受験を恐れ、諦めたりする気持ちになったりした場合、ダブル出願をしておくことでリスクをヘッジするという考えで行われるものです。特に小学生が受験する中学入試においては、何が起こるか分からないため、こうした備えをしておくことが大事になってきます。